[資料 No.11]

文献解説表

標題

シャンピニオンエキスの消臭作用と食品への応用


著者

谷口治


掲載

月刊フードケミカル 2002年2月号


要旨

本文は、シャンピニオンエキス濃縮粉末(以下BX150FPDまたはBX100FPD)に関する特性、組成、製法、消臭作用及び生理活性などの概説である。消臭にかかる箇所を以下に抜粋した。


(1)水素イオン濃度による消臭活性
 シャンピニオンエキスはin vitroにおいて悪臭成分の一つであるメチルメルカプタンを消去することが知られており、この特性を利用してシャンピニオンエキスの活性を検査することが行われている。局方第1液(胃液)と局方第2液(腸液)を使用したテスト結果では、シャンピニオンエキスのメチルメルカプタンに対する消去作用は溶液のpHに深く依存していて、pH0.9~1.2の強酸性環境では消臭活性は発現せず、pH5.5以上の弱塩基の条件下で強力に作用することが判明した。
 悪臭を発することで有名なドリアンが産生する臭気成分には数種類の硫化物が含まれる。これらの硫化物に対するBX150FPDの消臭活性を検査したテスト結果でも、pH7.2に調整したBX150FPDの1%溶液はドリアン果汁から発生したメチルメルカプタン、アリルメルカプタン、メチルプロピルサルファイドを、試料として混和後60分以内に完全に消去することが確認された。
 ヒトの胃分泌物のpHは強酸性の1~3、小腸では十二指腸から回腸へと徐々にpHが上昇し(十二指腸でpH5~6、空腸でpH6か7、回腸でpH8)、結腸ではpH8以上になることから摂取されたBX150FPDの消臭活性は小腸下部から結腸にかけて働くものと考えられる。

(2)消臭及び腐敗産物の抑制
 鶏肝ホモジネートの腐敗進行によるアンモニア性窒素の発生に対する影響を調べたin vitroテストの結果では、BX150FPDとして0.067%の割合で、鶏肝ホモジネートと混和した場合、腐敗進行によるアンモニア性窒素の発生は対照と比較して24時間目に51.6%、72時間目に81%のアンモニア性窒素の生成を抑制した。
 ヒト臨床試験として、社会福祉特別老人ホームの入所者と職員9名のボランティアに、BX100FPDの500mg/日及び1500mg/日の2週間投与し、摂取1週及び2週目に糞便サンプルを回収して細菌学的・理化学的検査を行った。その結果、BX100FPDの摂取により糞便中のアンモニア、硫化物、フェノール、クレゾール、インドール及びスカトールが非摂取期間と比較して25%~61%有意に減少することが確認され、特にインドールに対しては最も高い減少率を示した。