[資料 No.8]

文献解説表

標題

シャンピニオンエキスの腸内消臭と生理作用


著者

浜屋忠生


掲載

FOOD Style 21 1(5) 1997


要旨

有害物質を生成するウエルシュ菌や大腸菌などによって分解生成された腸内腐敗産物は、腸管から吸収され血液中に入り、口臭や体臭の原因となる。また、これらの物質は肝臓や腎臓障害などの原因ともなっている。したがって、腸内腐敗産物生成を抑制することは、口臭や体臭への配慮だけでなく、疾病予防や老化防止の面からも大変重要である。シャンピニオンエキスのこれら分解生成物に対する機能を調査する試験を行い、血中アンモニア減少、血中インドールとトリプタミン減少および慢性腎不全に対する効果を確認した。


目的

シャンピニオンエキスの腸内消臭効果とその生理作用および臨床例について紹介する。


具体的手法

・長期入院のお年寄りに対しシャンピニオンエキスを投与し、便臭抑制効果を調査した。
・家兎を用いて血中インドールとトリプタミンに対するシャンピニオンエキスの効果を調査した。
・食事療法を受けている慢性腎不全の患者に対するシャンピニオンエキスの腎不全進行の抑制効果を調査した。


結果の要約

対象例数摂取量・期間結果
血中アンモニア減少病院に長期入院中のお年寄り 男性:6名
女性:8名

計:14名
30日間・ガス検知管による便臭成分の測定では、シャンピニオンエキス投与日数の経過とともに顕著な減少傾向が示された。
・看・介護者による便臭の臭覚試験では、投与開始前は強かった便臭が明らかに弱い臭いになり負担が軽減される効果が認められた。
・血中アンモニア濃度の平均値が投与30日後には投与前より52%の減少が見られた。
血中インドールとトリプタミン減少日本産家兎の雄21頭対照区:
トリプトファン1g/kg
試験区:
トリプトファン1g/kg+シャンピニオンエキス0.5ml/kg
・血清中インドール酢酸濃度は、対照区で時間の経過とともに増加したのに対し、試験区では12時間後はインドール酢酸は全く検出されず、投与3時間以降、有意に血清インドール酢酸の生成抑制が認められた。
・試験区では、トリプタミンは検出されず対照区に対して有意差が認められ、シャンピニオンエキスがトリプタミンの生成を抑制することが示された。
慢性腎不全進行抑制慢性腎不全に陥り食事療法を受けている患者3例シャンピニオンエキス:
1g/日または2g/日
・シャンピニオンエキスの投与によって、血清クレアチニン値の上昇抑制や改善効果が認められ、腎不全の進行が抑制されていることが示された。

対象

血中アンモニア減少病院に長期入院中のお年寄り

例数

男性:6名
女性:8名
計:14名

摂取量・期間

30日間

結果

・ガス検知管による便臭成分の測定では、シャンピニオンエキス投与日数の経過とともに顕著な減少傾向が示された。
・看・介護者による便臭の臭覚試験では、投与開始前は強かった便臭が明らかに弱い臭いになり負担が軽減される効果が認められた。
・血中アンモニア濃度の平均値が投与30日後には投与前より52%の減少が見られた。

対象

血中インドールとトリプタミン減少日本産家兎の雄

例数

21頭

摂取量・期間

対照区:
トリプトファン1g/kg
試験区:
トリプトファン1g/kg+シャンピニオンエキス0.5ml/kg

結果

・血清中インドール酢酸濃度は、対照区で時間の経過とともに増加したのに対し、試験区では12時間後はインドール酢酸は全く検出されず、投与3時間以降、有意に血清インドール酢酸の生成抑制が認められた。
・試験区では、トリプタミンは検出されず対照区に対して有意差が認められ、シャンピニオンエキスがトリプタミンの生成を抑制することが示された。

対象

慢性腎不全進行抑制慢性腎不全に陥り食事療法を受けている患者

例数

3例

摂取量・期間

シャンピニオンエキス:
1g/日または2g/日

結果

・シャンピニオンエキスの投与によって、血清クレアチニン値の上昇抑制や改善効果が認められ、腎不全の進行が抑制されていることが示された。


まとめ

口臭や体臭などの不快臭、クレアチニンや窒素などの老廃物、血中アンモニア、アミン、インドール、メルカプタン、硫化水素などの化学物質は、臭気が不快感を与えるだけではなく、肝臓や腎臓障害などの引き金にもなっている。これらの血中濃度を顕著に下げ、不快臭の発生を防止する食品として摂取しながら効果のあるシャンピニオンエキスの機能は、健康的に生きていく体調づくりに貢献できるものと考えられる。